近年、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌は世界中で増加しており、日本においても病院で検出された大腸菌のうちESBL産生菌が10-20%の割合を占めることが報告されている。ESBLは様々な抗菌薬を分解し不活化する。現在ESBL産生大腸菌に対して、カルバペネム系抗菌薬以外の狭域抗菌薬において、使用できる薬剤がないかどうか検討が開始されている。オキサセフェム系抗菌薬は、ESBLによって不活化されず、in vitroにおいて、活性があることが示され注目を集めている。 本研究では、ESBL産生大腸菌に対するオキサセフェム系抗菌薬(フロモキセフ)の最適な投与量を決定する事を目的に研究を進めた。さらに、最終的にはpharmacokinetics-pharmacodynamics(PK-PD)に基づいたAUC(血中濃度一時間曲線下面積)/MIC(最小発育阻止濃度)、Cmax(最高血中濃度)/MIC、time above MICのPK-PDパラメータにより投与量、投与間隔を決定する事を目標としている。 方法として、鹿児島大学病院検査部の協力により患者から回収されESBL産生大腸菌と判断された菌に対し、感受性試験法である最小発育阻止濃度(MIC)をカルテ情報から収集する事で検討した感受性試験は微量液体希釈法にて検討した。 結果として、ESBL産生大腸菌に対してフロモキセフのMICは2ug/mLが効果的であることが明らかになった。今回の結果よりESBL産生大腸菌は少量の狭域抗菌薬が効果的である事がわかり今後の感染症対策に有効的であることがわかった。今後、結果を基にPK-PDパラメータの構築による最小限度での使用による適正使用の投与設計を試みる予定である。
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