研究実績の概要 |
パゾパニブは、進行性腎がんの1次治療として承認された分子標的抗がん薬である。しかし、用量制限毒性となる肝障害・高血圧等の重篤な有害事象のため、減量/中止を余儀なくされる場合が多い。これまで、パゾパニブ濃度が20.5μg/mL以上の症例で臨床効果が高かったと報告されている(Br J Cancer. 2014)が、毒性域についての検討はされていない。 今回、パゾパニブを投与した腎がん患者において、血中濃度測定および遺伝子多型解析は順調に集積されていており(28名、採血218ポイント)、現在、血中濃度の個体間変動要因を探索するために、ファーマコゲノミクス解析を進めている。今回、パゾパニブ濃度と奏効率・副作用との関連性を解析した結果を報告する。 滋賀医大病院でパゾパニブが投与され、本研究参加の同意を得た腎がん患者17名を対象とした。パゾパニブ濃度はトラフ値を採血し、高速液体クロマトグラフィーで測定した。投与開始3ヵ月の中央値の濃度と効果の関連性を、副作用発現時の濃度と副作用の重篤度の関連性を解析した。 パゾパニブ濃度の中央値は49.2μg/mL(10.6-93.3μg/mL)であった。パゾパニブ濃度が20.5μg/mL以上の患者(12名)では、CR(1名)、PR(8名)、SD(3名)であり、20.5μg/mL以下の患者(3名)ではSD(1名)、PD(2名)であった。グレード3以上の副作用が発現した患者のパゾパニブ濃度(3名)は、グレード2以下の患者(14名)よりも有意に高値であった(73.1μg/mL vs 43.0μg/mL, P<0.05)。 本結果より、パゾパニブ濃度が20.5μg/mL以上の患者で高い奏効率が認められ、パゾパニブの副作用は濃度依存的であることが示された。したがって、パゾパニブの効果を担保した上で重篤な副作用を回避するため、血中濃度のモニタリングは有用である可能性が示唆された。
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