研究課題
奨励研究
ヘプシジンは生体における唯一の鉄排出輸送体フェロポルチンの分解を促進するホルモンであり、慢性腎不全(CRF)ではヘプシジンの増加が認められる。本年度はCRFにおける尿毒素物質インドキシル硫酸(IS)の蓄積がヘプシジンに与える影響について検討した。8週齢の雄性C57BL6/Jマウスに、アデニン腹腔内投与することで腎不全モデルマウス(CRFマウス)を作成した。CRFマウスでは肝臓ヘプシジン発現増加および十二指腸FPN発現抑制が確認され、尿毒症改善薬AST-120によるIS除去によりCRFマウスの肝臓ヘプシジン発現増加が抑制され、十二指腸フェロポルチン発現抑制が是正されていた。また、CRFマウスは、腎性貧血、血漿鉄濃度の減少、血漿フェリチンの増加および脾臓中の鉄含有量の増加が確認でき、これらの変化は、AST-120治療によって改善されていた。直接的なIS投与によって処置されたマウスは、肝臓のヘプシジンのアップレギュレーションを示した。また、ヒト肝癌由来細胞を用いた検討でも、ISの核内受容体であるaryl hydrocarbon受容体のsiRNAを介したノックダウンによりヘプシジン発現増加は抑制された。さらに、IS刺激によって酸化ストレスの増加およびヘプシジン増加が確認でき、上記のISによるヘプシジンの変化は、抗酸化薬テンポールの前処理によって改善を認めた。以上の結果から、CRFにおけるISの蓄積はヘプシジン発現増加を介して臓器に鉄蓄積を引き起こし、血中鉄濃度を低下させることでCRFにおける貧血に影響を与えることが示唆された。尿毒素制御が、腎不全における鉄代謝異常を改善につながる新しい治療戦略となると考えられた。
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Nephrology Dialysis Transplantation
巻: - 号: 4 ページ: 586-597
10.1093/ndt/gfx252
http://repo.lib.tokushima-u.ac.jp/ja/list/theses_c/higaku/item/110922