【目的】カペシタビン(Cape)で高頻度に発現する副作用に手足症候群(HFS)がある。HFS予防や悪化防止目的に保湿剤の使用等が推奨されているが、HFS発現リスクの高い患者を予め把握できれば、HFS重篤化の回避が期待できる。本研究では、Cape使用患者のHFS発現や重篤度、関与する因子を統計学的手法を用いて後方視的に調査した。 【方法】2012年1月~2017年7月に東北大学病院においてCape処方患者について、年齢、性別等の基本情報、がん種、血液検査値、HFSの有無、及び処方薬(保湿剤等)の情報を収集した。HFS発現と関連する因子を明らかにするため、HFS発現の有無で多変量ロジスティック回帰分析を行った。 【結果】対象患者337名(乳がん202名、大腸がん102名、胃がん30名、その他3名)のうち、HFS発現患者は158名(46.9%)であり、他のがん種よりも乳がん患者の発現率(106名 : 52.5%)が高い傾向が認められた。次に、乳がん患者について、HFS発現なしとGrade 2(G2)以上(重症)の2群で多変量解析を行った結果、「BMI25kg/㎡未満(肥満なし)」、「保湿剤の予防投与あり」で有意にHFS G2以上の割合が高かった。さらに、乳がんかつ保湿剤の処方ありの患者において多変量解析を行った結果、「肥満なし」、「低アルブミン血症(低Alb)なし」で有意にHFS G2以上の割合が高かった。 【考察】体表面積が一定以上になるとCapeが固定量となるため、肥満患者では分布容積の増大に伴いCapeの血中濃度が低下する一方、逆に肥満なしの患者では相対的に血中濃度が高いがゆえにHFSの発現が高くなった可能性がある。また、低Albは低栄養や悪液質等の指標であり、こうした患者では全身状態を考慮して減量される可能性もあり、逆に低Albなしで相対的にHFSの発現が高くなったことも考えられた。
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