研究実績の概要 |
「研究目的」 膵癌に対するゲムシタビン(GEM)、nab-パクリタキセル(nab-PTX)併用療法(以下、GN療法)において、grade3, 4の重篤な好中球数減少は高頻度に認められる有害事象である。重篤な好中球数減少は重症感染症や敗血症の合併を招くことにより、入院期間の延長やquality of life(QOL)を低下させるだけでなく、全身状態の急激な悪化からときに重篤な転機をたどる可能性もある。各薬剤単剤では有害事象の関連因子は報告されているものの、GN療法においては明らかでない。そこで、本研究ではカルテ情報を元に膵癌のGN療法における好中球減少の関連因子を解析し、GN療法の安全性と有効性の指標となる因子を明らかにすること、加えて血中PTX濃度測定の安全性と有効性の指標としての有用性を検討することを目的とした。 「研究方法」 当院にて入院でGN療法を導入した治癒切除不能な膵癌患者(52例)を対象として、性別、年齢、BMI、体表面積、前治療歴、GEM・nab-PTXの投与量、臨床検査値を電子カルテより調査し、それぞれの要因と好中球数減少との関連性を多変量解析により検討した。臨床検体での血中PTX濃度測定のために、HPLCを用いた測定系の確立を行った。 「研究成果」 多変量解析の結果より、GN療法によるgrade3, 4の好中球数減少のリスク因子として治療前白血球数、絶対好中球数、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値が明らかとなった。このリスク因子を用いて事前に治療経過を予測することによって、適切な治療選択や充実したケアを患者個々のリスクに合わせて行うことができるようになることが期待できる。 血中PTX濃度の測定に関しては、25-100ng/mLの範囲において直線性、再現性ともに良好な結果が得られた。現在、当院の倫理委員会の承認を得てサンプル収集を継続している。引き続きデータを蓄積して検討を行う予定である。
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