【目的】 感染症治療において抗菌薬の適正使用は常に課題である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染症もその一つであり、MRSAの敗血症治療においてはダプトマイシン(DAP)、バンコマイシンが第一選択薬となっている。DAPは未だ耐性菌が少ないことから、MRSA治療への期待とともに適正使用が強く求められている。DAPの有効性の指標にCpeak/MICやAUC/MICが関連していることが報告されており、TDMによる血中濃度制御が耐性菌の出現防止に有用である。一方、臨床現場では抗菌薬の薬物クリアランスが著しく変動する特殊な薬物動態を示し、血中濃度制御に難航する敗血症患者を経験する。さらに敗血症患者に対して通常量のDAPを使用したにもかかわらず、AUC/MICが有効域へ到達しなかった患者群は死亡率が100%であったとの報告がある。このことから薬物体内動態が大きく変化する病態では血中濃度制御は必須である。そこで我々はMRSAによる敗血症治療において、薬物動態が変動するタイミングや強度については未だ明確な指標が無いことから、集学的治療を行いながらDAPの厳密な血中濃度制御を行うことで敗血症治療のさらなる救命率向上および耐性菌の出現防止に貢献することができると考える。 【方法】 まず既報を基に当院で測定可能なHPLC-UVによる条件を検討した。 DAPの標準試料200μLにアセトニトリル200μLを添加し、遠心分離後の上清を測定試料とした。 【結果・考察】 DAPは保持時間が約3.5分で検出可能となった。またDAPのピーク高さは0.5-25μg/mLの範囲でR^2=0.997と良好な直線性を示した。しかし2.5μg/mL以下の低濃度域では血漿由来の夾雑ピークの影響により十分な検出感度を得ることができなかったため、臨床検体での測定精度を上げるためにはさらなる条件検討が必要と考えられた。
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