【研究目的】ポリファーマシー対策として当院ではこれまでSTOPP criteria version 2(以下、STOPP2)及び高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(以下、高齢者GL)を用いた潜在的に不適切な処方(以下、PIMs)への薬剤師による介入を行っている。本研究では、①入院中にPIMsに介入した患者の退院後の処方内容の評価、②STOPP2と高齢者GLを組み合わせた基準(STOPP2+高齢者GL)を作成しPIMsの検出感度と処方変更の効率を向上させ、且つ入院中の介入内容をかかりつけ医療機関・保険薬局と情報共有すること、③保険薬局においてもPIMsに介入できるような体制の構築を目的とした研究を実施した。 【研究方法】①2016年4月-9月に当院に入院後PIMsを変更し退院した患者の退院後の処方内容につき電子カルテを用い調査した。②2018年1-2月に当院の5病棟に新規入院した65歳以上の患者を対象として、STOPP2+高齢者GLを用いPIMsの検出・介入を実施した。また介入内容をお薬手帳に記載できるシートも作成し、その活用によりかかりつけ医療機関・保険薬局との情報共有を図った。③STOPP2や高齢者GLの各項目を検索・閲覧できるwebシステム(PIMCO)を構築し、登録制で各保険薬局に提供した。更にポリファーマシーに関する保険薬局との合同勉強会を開催し、保険薬局薬剤師の知識・意識の向上を図った。 【研究結果】①入院中にPIMsを変更し退院した患者は40人で、うち当院で処方のあった患者は29人、処方内容が確認できた範囲でPIMsが再開された患者は13人、薬剤別ではベンゾジアゼピン系薬剤が9/19件で再開されていた。②対象患者は173人、うちSTOPP2+高齢者GLの該当患者は76人(43.9%)であった。STOPP2+高齢者GLの項目別に集計するとPIMsは148件あり、うち55件(37.2%)が処方変更となった。処方を変更した38人の患者のうち17人については退院時にお薬手帳に介入内容を記載した。③PIMCOの利用登録を行った保険薬局は10件であった。合同勉強会は2017年度中に2回開催し、参加した薬局薬剤師は第1回が20人、第2回が11人で、アンケートでは参加した殆どの薬剤師から今後も積極的な連携を望む回答が得られた。 【結論】今回の研究結果から、STOPP2と高齢者GLを組み合わせて薬剤師がPIMsへ介入することの有用性、及び保険薬局薬剤師とのポリファーマシー対策に関する連携の必要性・重要性が示唆された。
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