研究実績の概要 |
研究代表者らは、ランダム突然変異マウスの睡眠覚醒行動をスクリーニングし、睡眠時間が顕著に増加するマウス家系を樹立した。さらに検討を進め、Sik3遺伝子の一塩基変異が顕著な過眠の原因となることを明らかにした(Funato, Kanno et al., Nature 2016)。 Sik3遺伝子変異マウスの飼育管理を行っているなかで、この変異マウスが肥満を示すことに気づいた。人工授精によって、野生型およびSik3遺伝子変異マウス(ヘテロ接合体、ホモ接合体)の雄を3~10匹用意し、生後6週、12週、18週で3D-CT撮影を行った。内蔵脂肪および皮下脂肪の変化を中心に測定したところ、Sik3遺伝子変異マウス(ヘテロ接合体、ホモ接合体)では、野生型マウスに比べ、比較的若年齢から顕著な脂肪量の増加が確認された。 また当研究室では、Sik3 exon-13 floxedマウスを作成し、更なる研究を進めている。これらのマウスは、Cre酵素が特定部位で発現することによりloxP配列が切断され、条件的・部位的にSik3遺伝子がノックアウトされるマウスのことである。SIK3は、Sik3遺伝子変異マウスの体重増加に影響するであろう骨、肝臓などの発達および機能に関与しているため、Sik3遺伝子変異マウスの過体重に関与する細胞型を絞り込むこと、また同様のマウスで睡眠覚醒行動も測定し、肥満と睡眠の関係を明らかにすることが次なる課題である。 人工授精によるマウスの生産を行ったが、変異遺伝子という特性上、ホモ接合体はなかなか入手しづらく、しかも胎児期は野生型に比べ体が小さいために淘汰されやすいという難点がある。今後はマウス匹数を増やすことが大きな課題となる。
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