本研究は、血漿交換によるドナー特異的抗HLA抗体(DSA)除去率とその効果を明らかにする目的で、血漿交換前後のHLA抗体の推移を検討した。2008年3月から2016年6月までに当院で肝臓および心臓移植を検討した症例のうち、DSA陽性である4症例を対象とした。抗体の測定にはLABScreen Single Antigen(One Lambda)を用い、平均蛍光強度(MFI値)で評価した。1症例は術前に血漿交換を施行したがDSA抗体価が低下せず、移植を断念した。移植に至った3症例のうち、症例1は肝臓移植術後3日目より血漿交換を施行、DSA(lgG抗体)除去率はA2 97.9%、A24 99.8%、B35 96.4%、B54 99.6%、DR4 95.4%であった。症例2・3は心臓移植前日よりMMF投与、術中より血漿交換を施行し、症例2のDSA(lgG抗体)除去率はA24 75.5%、A26 86.8%、B56 40.5%、B61 73.8%、症例3はA24 83.6%、B13 31.6%、DR7 82.6%であった。持続性のある抗体特異性として日本人頻度の高いB13、B44、DR4、DQ6が検出されたが、明らかな抗体関連拒絶は認められなかった。血漿交換による抗体除去率は症例により異なるが、DSAは現在ほとんど消失している一方で、non-DSAは持続性がある抗体が多く特に日本人頻度の高い特異性が高力価で持続していた。このDSAとnon-DSAの抗体持続性の解離から、non-DSAの中に真の抗体ではないものが含まれている可能性が示唆された。またABO不適合腎移植における血漿交換ではlgM抗体の除去率が大きいことが知られているが、今回の症例ではlgM抗体はほとんど検出されず、lgG抗体除去率との関連性は確認できなかった。今度、DSA除去率に差が生じる機序や他の脱感作療法との関連等さらなる検討が必要である。
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