研究実績の概要 |
①850nmの近赤外線(NIR)CTスキャナーの開発 : 最大強度波長が850nmのNIR発光ダイオード(LED)の電流を最大値の100mAに設定し, NIRの強度を最大にした。次いで最大感度波長が900nmのフォトトランジスタ(PT)にコリメーターを取り付け, PTに流れる光電流をエミッタフォロワ回路によって電圧出力として変換した。被写体をターンテーブル上で回転させ, LEDとPTを並進スキャンさせることで撮影を行い, 得られたプロジェクションデータにより断層像を再構成した。 ②940nmのNIR-CTスキャナーの開発 : 最大強度波長940nmのLEDと最大感度波長940nmのPTを対向させて並進スキャナーを構成し, ①と同様に断層像を再構成した。 ③開発したNIR-CTスキャナーによる撮影 : X線に比して, NIRは被写体により反射するため, 断層像周囲の画像濃度が増加し, 当初の撮影では画像描出が困難であった。そこで, 直径1.5mmで長さ15mmのグラファイト製コリメーターを用いることにより, 断層像周囲の濃度が減少し, 空間分解能が2×2m㎡の比較的鮮明な画像が得られるようになった。次いで, 電圧出力が最大の5.0Vになる抵抗値50kΩを相対感度1と設定し, 相対感度を1から20まで可変させて画像を撮影し, X線とは異なった画像のコントラスト変化を確認することができた。また850と940nmピークのNIRを分光器でスペクトルを測定し, 撮影することで, 条件によっては比較的容易に筋肉や骨を透過することがわかった。また, ヘモグロビンやフタロシアニン色素が特定の波長のNIRを効率的に吸収することを確認した。この特性は血管の描出や脳の機能イメージングへ応用でき, 新たなイメージングとして医療に応用可能である。今後, NIR源の高輝度化, 受光器の感度増加, 空間分解能の改善を目指し研究を継続していきたい。
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