研究課題
奨励研究
原因不明とされる不妊症の中には、抗精子抗体(ASA)が関与しているものがあると考えられている。抗精子抗体の中には受精障害作用を持つものもあるが、当研究グループが樹立したASAであるTs4は、バイセクト型GlcNAc糖鎖を抗原として認識する。本課題では、Ts4抗体が認識する糖鎖構造の生理機能を明らかにすることを最終目標にしている。また、この糖鎖抗原の機能構造連関を詳細に検討することにより、原因不明不妊症の病理を理解する一助となることが期待できる。Ts4抗体は、これまで成獣を用いた免疫組織学的解析により成熟精子以外に精母細胞・精子細胞・精巣精子および初期胚にのみ反応することが明らかになっているが、体細胞中には検出できていない。従って、どのような発現動態を経て精巣に限局するのかは明らかになっていない。本研究において、精子形成~受精後個体発生過程におけるTs4陽性細胞の発現分布を継時的に追い、その詳細を明らかにすることを目的とした。Ts4対応抗原の発現を検討するため、妊娠マウスより経時的に胚を採取し、それら生体試料に対するTs4抗体の反応性を、免疫組織化学及びウェスタンブロットを用い解析した。組織はパラホルムアルデヒド固定凍結切片及びブアン液固定パラフィン切片を作製し解析した。その結果、胎生期においては胎盤と各体細胞臓器でTs4抗体の反応を認めた。免疫染色陽性部位が判明したので、マイクロダイセクション顕微鏡等を用いてTs4陽性検体を採取し、対応抗原糖鎖が修飾されているタンパク質の生化学的特徴を、今後明らかにする予定である。
すべて 2018
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Ann Clin Biochem
巻: 55 号: 2 ページ: 287-295
10.1177/0004563217717748