血管内皮機能の評価は心血管疾患・脳血管疾患に対する予防医療の上で重要である。現在、血管拡張反応を用いた生理検査が評価に用いられるが、検査時間が長いため少人数しか検査できない等の問題がある。近年、様々な疾患のバイオマーカーとして血中のmicroRNA(miR)が注目されている。miRはmRNAの翻訳を制御することで多くの病態に関与するnon coding RNAで、血管内皮細胞やその機能との関連についても報告があるが、血管内皮機能検査との関連についての報告は少ない。本研究では、miRを用いた血液検査で血管内皮機能を評価することを目指し、生理検査法の1つであるreactive hyperemia-peripheral arterial tonometry(RH-PAT)と血中miRの関連を検討した。 RH-PATを施行した被験者9人(血管内皮機能低下群6人、対照群3人)から血清を採取し、3D-Gene arrayにより2565種類のmiRを網羅的に定量した。2群間のmiRの発現変化を、fold changeとp値からvolcanoplotを用いて比較すると、29種類のmiRで有意な変動が見られた。また、血管内皮機能低下群を背景疾患(高血圧/糖尿病)あり群となし群に分けて同様に対照群と比較すると、どちらの比較でも有意な変動が見られるものが2種類あり、疾患の有無に関係なく血管内皮機能低下に関連すると考えられた。さらに、29種類のmiRを対象にクラスター解析を行うと、「血管内皮機能低下群で減少するもの」「増加するもの」「疾患ありで特に増加するもの」などに分類された。これらのmiRを組み合わせたパネルにより血管内皮機能低下を推定することを目指し、一部のmiRで定量的PCRでの測定を行ったが、アレイの再現がとれないものがあり、今後さらに測定対象を広げて検討する必要があると思われた。
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