【研究目的】コアグラーゼ陽性ブドウ球菌の一種であるStaphylococcus pseudintermediusは、主にイヌ、ネコから分離される日和見感染症の病原体であり、ヒトでの感染例も報告されている比較的新しい菌種である。自動同定機器の対象菌に未だ含まれておらず、生化学的性状もS. intermediusと類似していることからS. intermediusもしくは未同定とされることが多い。獣医学領域ではmecA保有メチシリン耐性S. pseudintermedius(MRSP)が出現してきており治療上問題となっている。耐性菌を判定する際は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の判定薬であるセフォキシチン(CFX)とオキサシリン(MPIPC)を用いるが、MRSAで必ず耐性となるCFXが本菌では感受性と判定されるため、2015年には米国の薬剤感受性試験基準CLSI M100 S26で本菌の判定基準が新たに設けられた。今後は本菌に対する的確な釣菌技術と正確な菌種同定が求められている。上記背景をもとに、生化学的または分子疫学的にどのような特徴を持った株がヒトから分離されるのかを明らかにする。 【研究方法・結果】Micro scan WalkAwayでS. intermediusまたはStaphylococcus sppと同定されたヒト臨床検体由来58株を遺伝子学的に調べたところ、13株がS. pseudintermediusと同定された。13株全て35℃、炭酸ガス、一夜培養下の血液寒天培地上に弱い溶血を示し、11株で卵黄寒天培地上にLV反応陽性を認めた。血液寒天培地上の弱い溶血は冷蔵するなど冷却することで溶血環がより強くなった。生食溶解ウサギ血漿によるコアグラーゼ試験では6株が陽性を示したのに対し、TSB溶解ウサギ血漿によるコアグラーゼ試験では13株全て陽性となった。mecA保有株は5株あり、SCCmec typeはV型3株、II-III型2株。MLST解析では、642型3株、71型2株、422型1株、420型1株、Non typable 6株であった。 【結語】本菌の鑑別には、溶血性とLV反応に加え、TSB溶解ウサギ血漿によるコアグラーゼ試験で陽性を確認することが重要であった。
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