研究目的 : 本研究では赤血球製剤の使用後輸血製剤に付属するセグメントチューブおよびアレルギー反応に深く関与するDuffy抗原親和性ケモカインであるRANTESを用いて赤血球からのRANTESの放出、また、赤血球によるRANTES吸着能を赤血球製剤の保存期間別に比較することで赤血球製剤の長期保存が赤血球ケモカイン吸着能に影響を与えるかを検討した。 検討項目 : 赤血球製剤を15件使用し、3群〔採血後10日間以内の新しい赤血球製剤(以下NEW群 : 平均値9日間)、11~21日間の古い赤血球製剤(以下OLD群 : 平均値19.2日間)、有効期限を超過した赤血球製剤(以下OVER群 : 平均値41.2日間)〕において比較検討を行った。セグメントチューブより得られた血液を上清と血球に分離、血球洗浄後、濃厚RANTES液(10ng/ml)にて37℃1時間インキュベートし、インキュベート前後での赤血球中RANTES濃度を測定した。 結果 : セグメントチューブ上清中の3群におけるRANTES濃度平均値はNEW群1.0ng/ml、OLD群1.9ng/ml、OVER群1.6ng/mlであった。インキュベート前の赤血球中RANTES濃度平均値はNEW群4.8ng/ml、OLD群9.8ng/ml、OVER群5.9ng/mlであり、インキュベート後はNEW群6.6ng/ml、OLD群10.8ng/ml、OVER群8.5ng/m1であった。赤血球によるRANTESの吸着率(インキュベート後RANTES濃度×100/インキュベート前RANTES濃度)はNEW群177.0%、OLD群111.3%、OVER群182.8%であった。 結語 : 保存期間の経過に伴い赤血球製剤における血液保存液中RANTES濃度は増加傾向を示した。また、赤血球のケモカイン吸着能は長期保存においても保たれていることが示唆された。
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