【研究背景・目的】 現在広く使用されているフィブリノゲンの検査法(クラウス法)は、フィブリノゲン活性を評価する検査法でありフィブリノゲンの量的異常を検出することはできるが、質的異常(フィブリノゲン異常症)を検出することができない。質的異常の検出のためにはフィブリノゲン抗原量測定が必要であるが、抗原量測定は検査コストの問題もあり一般的な検査室では実施されていない。今回我々は、抗原量測定を必要としない新規フィブリノゲン異常症検出法を構築することを目的として研究を行った。 【研究方法】 凝固波形解析は、凝固反応過程をモニタリングして、その反応自体(凝固波形)や、速度および加速度などのパラメーター評価する手法である。今回は、クラウス法において凝固波形解析を行い、健常人およびフィブリノゲン異常症患者検体を用いて、凝固波形解析から得られる数値パラメーターの解析を行った。なお、本研究は名古屋大学医学部生命倫理委員会の承認を得て施行した。 【研究成果】 健常人検体を用いた凝固波形解析の結果から、反応速度を表す“Min1”という数値パラメーターが、フィブリノゲン抗原量と強く相関することを見出した。Min1はフィブリノゲン異常症検体においてもフィブリノゲン抗原量と良好な相関を示したため、Min1がフィブリノゲン抗原量の代替指標となることが示唆された。Min1と抗原量から作成した検量線を用いると、Min1から推定抗原量を求めることができ、クラウス法測定から得られる活性と推定抗原量の比から推定比活性を算出することが可能となった。推定比活性は、実測の比活性と同様にフィブリノゲン異常症で有意に低値を示した。以上より、クラウス法に凝固波形解析を組み合わせることにより単独で推定の比活性を求めることが可能となり、フィブリノゲン異常症を検出することができる新規検査法として有用であることが示唆された。
|