全身性強皮症は、皮膚および内臓の線維化、血管障害、免疫異常を特徴とする発症機序不明の全身性疾患である。その機序として、血管障害による低酸素が誘導する酸化ストレスが線維化に関与することが示唆されている。我々はこれまでに、A型ボツリヌス毒素が虚血による酸化ストレス障害を抑制し血管障害抑えることを明らかにした(Scientific Reports 2015 ; 5 : 9072.)。また、強皮症に伴うレイノー現象を持つ患者にもボツリヌス毒素を投与して良好な結果が得られた(J Dermatol 2016 ; 43 : 56-62.)。最近、ボツリヌス毒素は免疫機能や線維芽細胞増殖能など、様々な細胞機能を制御することが注目されており、ボツリヌス毒素の持つ様々な作用を応用すれば新たな治療薬としての可能性も期待できる。そこで本研究では、強皮症由来線維芽細胞やブレオマイシン誘発強皮症モデルマウスの皮膚線維化に対するボツリヌス毒素の治療効果を明らかにし、その機序を解明することを目的とした。 1. 線維化の病態に対するボツリヌス毒素の影響について、強皮症患者由来線維芽細胞を用いて検討を行った。強皮症患者由来皮膚線維芽細胞を数種類用いて、低酸素刺激を行い、線維化に関与する因子である、1型コラーゲン、TGF-βなどの発現に対するボツリヌス毒素の影響について、免疫染色、ウエスタンブロット法、リアルタイムPCR法を用いて検討を行った。 2. ブレオマイシン誘発強皮症モデルマウスの病態(皮膚線維化、血管障害)に対するボツリヌス毒素の治療効果について検討した。マウス背部の皮下にブレオマイシンを2週間、連日注入し皮膚線維化を誘導する。この皮膚線維化モデルマウスに対して、ボツリヌス毒素の治療効果を検討した。その結果、ボツリヌス毒素による治療効果が得られた。今後は詳しい機序について解析する。
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