研究実績の概要 |
【目的・研究実施計画】 本研究の目的は、薬剤耐性に関与する遺伝子・シグナル経路の発現と抗癌剤耐性機構を解明し、最終的に個別化治療を確立するための基礎的データを蓄積することである。本研究の遂行によって、シスプラチン(CDDP)やセツキシマブ(Cmab)耐性症例を予測し、抗癌剤の有効性をin vitroで検討することで、ほかの有効な分子標的薬の選択が可能となる。 口腔扁平上皮癌細胞株SCCKNに対しdose escalation methodを用いてCmab耐性細胞を作成した。同時に親株をTruSeq Amplicon-Cancer Panelを用いた次世代シークエンサー(NGS)で遺伝子変異を解析した。さらにCmab耐性細胞におけるEGFR-Ras-Raf-MEK-ERK経路やPI3K-AKT-mT0R経路のタンパク発現をWestern Blot法を用いて検討した。 【結果】 SCCKNはCmabに対して早期に耐性を獲得し、400μg/mlのCmab存在下で継続的に培養が可能となった。NGSを用いたがん遺伝子の変異ではE542K, G<Aの遺伝子変異が確認されたことが確認された。Cmab耐性細胞は親株と比較してEGFRやPI3KやPTENに発現の差は認めなかったが、pEGFRは約1.7倍、Aktは約9倍、pAkt(Ser473)は約1.6倍とタンパク発現に差を認めた。 Cmab耐性はリガンドの過剰発現やEGFR・Rasの変異などが報告されているが、さらに下流のPIK3CAに変異があれば容易に耐性が成立することが予想される。分子標的薬はシグナル上流を抑制するものが多く、従来の癌化学療法における獲得耐性がポイントであったことに対しintr insic resistanceも問題となり得ることが示された。
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