内容 : ①ラット臼歯に窩洞形成を施した後、象牙芽細胞・痛覚神経終末におけるTRPチャネル発現量の増加を解析し、②ラット窩洞形成モデルを用いて、イオン導入により送達させるTRPチャネルアンタゴニストの有効性を評価した。③その際、マイクロニューログラフィ(三叉神経線維に微細電極を刺入する方法)を用いて電位を記録するが、神経発射頻度をイオン導入しない群と比較することで電気生理学的に実用性を評価する。 意義 : ①ラット臼歯に窩洞形成を施し、術後3日において温度感受性TRPチャネルの発現部位・発現量を免疫染色およびリアルタイムPCRによって解析し、窩洞形成を行わない対照群と比較した。②その後、発現増加したTRPチャネルに対するアンタゴニストを歯髄内に送達するために効率的な条件を決定できた。 以上から、本疼痛制御法の有効性評価のため、窩洞形成を行ったラット臼歯に、イオン導入により象牙質経由でアンタゴニストを送達することで、温度刺激によって生じる痛覚過敏が抑制できることがわかった。 重要性 : 歯髄の温度痛覚受容性を低下させることで、歯科治療後の医原性知覚過敏症を回避することができると期待される。今後も歯科臨床現場では医原性知覚過敏症は増加が予想されるが、これまで待機的方法だけであった領域に新しい疼痛緩和療法を提案することが可能であると考えられる。歯科医師にとって安全かつ確実な治療法の確保、患者にとっては処置後の苦痛軽減がもたらされるに違いない。
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