1. 研究目的 核酸アプタマーは、in vitroでのスクリーニングが可能で、配列さえ決定すれば安価かつ容易に入手でき、幅広い検出系に利用可能であるなど、抗体に比べ様々な利点を有している。これらの利点は、主に抗体を使用して体液証明を行う法科学鑑定において利用価値が高いと考えられる。そこで本研究では、タバコの吸い殻など犯罪現場に遺留される機会が多く、DNA型が検出される確度が高いにもかかわらず、未だ証明に有効な抗体等が販売されていない唾液に注目し、唾液の証明に利用するDNAアプタマーの探索を行う。また、体液証明への利用を前提としたDNAアプタマーのスクリーニング法の確立も合わせて行う。 2. 研究方法 血液、精液、尿、汗、膣液の上清タンパク及び唾液の指標であるHistatin5を担体に固定化し、24merのランダム配列の両端にプライマー結合配列を有するDNAライブラリーと結合、PCR増幅、精製を繰り返して、Histatin5結合性DNAアプタマーのスクリーニングを行った。なお、本研究は日本法科学技術学会倫理審査委員会の承認を得て実施した。 3. 研究成果 各ラウンドのカウンターセレクションでは、DNAライブラリー量は減少し、Histatin5に結合するDNAライブラリーを回収、PCR増幅することができた。よって、唾液以外の体液への結合活性を有するDNAライブラリーを排除しながら、Histatin5のみに結合するDNAライブラリーが選抜されているものと考えられ、目的体液以外のカウンターセレクションを含むSELEX法を構築できた。今後は、ラウンド数を増やして更に選抜を行い、Histatin5結合性DNAアプタマーの配列を決定する予定である。
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