研究課題
基盤研究(A)
本研究は、国民国家における戦争の記憶を記録化した象徴的建造物である戦争記念碑と戦歿者墓碑の現存状態の分析を通じて、戦後社会が如何にその戦争の歴史的意義を認識し且つ戦争犠牲者を理解し受容してきたのかを追究してきた。これにより、1945年を境界とする戦後世界を形成している平和と人権に対する価値基準でもある戦後正義論を基に、どのようにその戦後社会が戦争犠牲者の記録化を通じて国際平和の実現を希求してきたのかを市民的視点から明らかにしてきた。また、かかる戦後社会が取り組む、戦争の後始末でもある戦争の記憶を記録化しそれを後世に伝える社会活動を、戦争史研究の領域に包括する歴史理論を提起した。
本研究の学術的意義は、戦争記念碑(像や塔等を含む)と戦歿者墓碑の歴史資料的価値を明らかにするだけではなく、それが建立・維持・管理・活用されている実態を踏まえ、それが建立されている地域社会における戦争観・平和観を解明する方法論を構築したことにある。そもそも、記念碑は建立だけではなく現存そのものにも大きな意味があるからで、それは現存していることがその記念碑の価値観を地域社会が共有化しているからである。さらに、1945年を戦争と平和の境界とする独特の「戦後観」を持つ日本の戦争観・平和観を、戦争犠牲者慰霊の視点と戦後正義論の立場から評価し歴史学的視点から解明していくことの現代的意味を明らかにしたこと。
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中京大学社会科学研究
巻: 40 ページ: 1-158