研究課題/領域番号 |
17H01314
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
無機材料・物性
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
太田 裕道 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (80372530)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2019年度)
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配分額 *注記 |
45,630千円 (直接経費: 35,100千円、間接経費: 10,530千円)
2019年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2018年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2017年度: 32,890千円 (直接経費: 25,300千円、間接経費: 7,590千円)
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キーワード | ナノ周期平行平板構造 / 熱伝導率 / 高ZT熱電材料 |
研究実績の概要 |
本研究では、パルスレーザー堆積法や反応性エピタキシャル成長法を駆使してナノ周期平行平板構造薄膜を作製し、その物質、組成、角度と熱伝導率の関係をTDTR法によって精密に計測することで、「ナノ周期平行平板構造が熱伝導率に及ぼす影響を実験的に解明する」ことを目標している。2017年度は、当初計画通り、ピコ秒レーザーを備えるパルス光加熱サーモリフレクタンス装置を導入し、研究を始める前に、1.標準試料(熱伝導率既知のバルク単結晶及び単結晶薄膜)の熱伝導率を計測することで、装置の計測精度をチェックした後、2. SrTiO3人工超格子、3. SrTiO3-SrNbO3固溶体、4. 層構造を傾斜させたCa3Co4O9薄膜の熱伝導率計測に取り組んだ。2. SrTiO3人工超格子の熱伝導率は、約3 W/mKと低く、人工超格子が正しく積層されていることを示した。この結果は既に論文投稿済であり、好意的な審査結果を得たところである。3. SrTiO3-SrNbO3固溶体では、非常に興味深い結果が得られた。一般に熱電変換の教科書には「重金属置換は格子熱伝導率の低下に繋がる」と明記されているが、本研究では全く反対の結果が得られた。これが正しければ世の中の常識を覆すことになる。現在、フォノンの計算も併用して解明を行っている。また、4. 層構造を傾斜させたCa3Co4O9薄膜の熱伝導率は、層構造が基板面に平行な場合に比べて大きく、層に平行方向の熱伝導が支配的であることを示した(論文執筆中)。また、現在は層間距離をデジタル制御可能な自然超格子InGaO3(ZnO)m薄膜の作製を行っており、成膜が完了次第熱伝導率の計測に移る予定である。論文、招待講演などの実績(数)は、原著論文:7報、招待講演:13件、著書:1、新聞等報道(海外含):35件、など。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、当初計画通り、ピコ秒レーザーを備えるパルス光加熱サーモリフレクタンス装置を導入し、1.標準試料(熱伝導率既知のバルク単結晶及び単結晶薄膜)、2. SrTiO3人工超格子、3. SrTiO3-SrNbO3固溶体、4. 層構造を傾斜させたCa3Co4O9薄膜の熱伝導率を明らかにした。中でも、3. SrTiO3-SrNbO3固溶体では、古くから信じられて、教科書にも載っている「重金属置換は格子熱伝導率の低下に繋がる」という常識を覆す結果が得られ、現在、フォノン計算も併用して解明を行っている。また、2. SrTiO3人工超格子の研究は、既に論文投稿済であり、好意的な審査結果を得たところである。また、自然超格子InGaO3(ZnO)m薄膜の作製は順調に行っている。以上のように、研究成果は極めて順調に出始めている。2017年度の進捗状況は、概ね順調であり、一部は、当初計画を上回っていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、自然超格子InGaO3(ZnO)m、層状構造を有するBi2Te3系熱電材料や、温度によって構造相転移を起こす遷移金属酸化物の薄膜作製と、その熱伝導率計測を行う。金属酸化物薄膜の熱伝導率計測はほとんど手が付けられていない未開拓の研究領域であり、計画した以外の金属酸化物薄膜についても国内外の研究者と協力し、積極的に共同研究を進める予定である。
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