研究課題
基盤研究(B)
本研究では黄砂表面におけるPAH酸化体の二次生成反応,とりわけ,生体内で酸化ストレスを誘導し,呼吸器・循環器疾患やアレルギー疾患増悪作用をもたらすPAHキノンの非意図的生成に関わる反応について,模擬大気実験系を用いた反応実験および実大気観測を行い,(1)黄砂によって触媒される大気内PAH酸化体(キノン)生成反応過程の解明,(2)実大気中の黄砂表面における有害PAH酸化体生成の検証 を試みるとともに,反応生成物及び実大気黄砂試料に検出されたPAH酸化体に対するバイオアッセイによって,(3)呼吸器系・循環器系・アレルギー性疾患などの生体影響との関連を明らかにすることを目指した。
黄砂発生時には呼吸器・循環器系疾患の増加,アレルギー性疾患の悪化が生じることなどが報告されているが,その作用主体は依然として不明なままである。PAH酸化体の一種であるPAHキノン類は,呼吸器・循環器系疾患の要因となる活性酸素種を体内で過剰に産生するだけでなく,アレルギー性疾患の発症に関与することが報告されている。高活性な黄砂表面において,中国で発生する高濃度の大気汚染物質を原料にこれらPAHキノン類が二次生成し,日本に越境輸送されることが判明すれば,これまで解明されていなかった黄砂による健康被害の原因主体特定の飛躍的な一歩となる可能性がある。
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