研究課題/領域番号 |
17H02016
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
文化財科学・博物館学
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
江藤 望 金沢大学, 学校教育系, 教授 (60345642)
|
研究分担者 |
大村 雅章 金沢大学, 学校教育系, 教授 (00324062)
菅原 裕文 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (40537875)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
|
配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2018年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2017年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | フレスコ画 / 円光 / ストゥコ / シエナ派 / 絵画術の書 / サン・ジミニャーノ / 盛り上げ / ストゥッコ / 新約聖書伝 / コレッジャータ教会 / ストゥッコ技法 / ゴシック期 / チェンニーノ・チェンニーニ / ゴシック絵画 / 金属箔 / 漆喰 / シモーネ・マルティーニ / 国際ゴシック様式 / 技法復元 |
研究実績の概要 |
平成31年2月の現地調査で明らかになったイタリア、サンジミニャーノの参事会教会フレスコ画『聖十字架伝』のメイン画面に採用された特異な円光について研究を実施した。 まず2003年以来、調査を継続してきたフレスコ画の円光と、この特異な円光を徹底的に比較検証した。これまでわれわれの研究チームが把握していた円光盛り上げは、そのほとんどが漆喰モルタルによる盛り上げ、つまりストゥッコ技法によるものであった。しかし、同壁画のメイン画面である「カルバリへの道」と「十字架磔刑」には、従来のストゥッコ技法では考えられない極めて精緻な装飾であり、経年変化による損傷も従来の技法では考えられないものであることが判った(令和2年2月の現地調査)。 技法に関しては、シエナ派の多くは漆喰が柔らかい間に型押しによって植物や幾何学的な文様を立体的に装飾するものであったが、明らかに別の場所でつくられた立体的装飾のパーツを該当箇所に貼り付けたやり方であった(令和2年2月の現地調査)。材料に関してはまだ仮説の段階であるが、蜜蝋を主原料とするパスティーリアの可能性が高いと考えている。これからはそれらの技法・材料を立証するために、他の盛り上げの技法・材料で実際に同円光の盛り上げ装飾を含め、実験を繰り返し実証的に解明していく方針である。 また、分担者大村はカルロ・クリベッリの盛り上げ装飾技法から彼の画業のルーツを探り出す研究(学会および論文発表)を行っている。現課題であるこの特異な円光の技法と材料が、分担者大村の研究課題であるカルロ・クリベッリが使用したパステーリアの技法と偶然にも酷似していることを付記しておく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度に、学内業務では教務・学生生活委員長と副学類長を兼務し、さらに部活動の顧問業務では北陸大学野球連盟の事務局長を1人で担当していたため、本研究課題に時間を割くことが大変厳しかった。 本来なら、平成31年2月に実施した現地調査で明らかになったサン・ジミニャーノのコレッジャータ教会壁画における特異な円光技法について学会誌に報告する予定であったが、提出期限までの執筆が守れなかった。同じく9月に学会発表を予定していたものの、校務過多により実現できなかった。令和2年度には新たな知見を加え論文として発表する予定である。 また、チェッティ・ムスコリーニ前ラベンナ国立博物館館長そしてモザイク壁画が専門の工藤晴也 東京芸術大学教授に研究助言や外部評価をお願いする予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止せざるを得なかった。感染症が収束した暁にはあらためて実施する計画である。 加えて、令和2年2月に予定していたイタリアへの現地調査はなんとか実施することはできたものの、充分な調査にはいたらなかった。その中でも、今回の調査で研究対象の詳細な画像写真が入手できたので、今後の研究の展開が期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年2月に実施した現地調査で研究対象の高精細な画像が入手できたので、このデータを詳細に分析し技法と材料の分析を行う。技法の根拠となる文献は、同時代のフィレンツェ派の画家チェンニーノ・チェンニーニが記した『絵画術の書』である。 まず、この技法書に掲載されたフレスコ画および板絵テンペラ画の盛り上げによる立体的装飾技法の中から、本研究課題に使用された可能性の高い技法を抽出する。現段階では上述の通り、仮説としてパステーリアの技法による可能性が高いと考えている。この技法はすでに分担者大村によって技法解明が進んでいるが、再度、『新約聖書伝」に取り入れられて特異な円光に採用された技法かどうか詳細な比較検証する。 次に、パステーリア以外の可能性の高い技法・材料を用いて研究対象の円光を模写(刻)する。それら実証実験ををテストピースとしてまとめ、2月に予定している現地調査において、オリジナルと比較する。この比較検証で技法・材料が絞られてくると考えられるので、その技法・材料を使用してオリジナルの復元模写をおこなう。 のお、現段階での研究成果を学会誌に投稿する計画である。
|