研究課題/領域番号 |
17H02501
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
理論経済学
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
グレーヴァ 香子 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (10219040)
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研究分担者 |
中泉 拓也 関東学院大学, 経済学部, 教授 (00350546)
西村 直子 立命館大学, 食マネジメント学部, 教授 (30218200)
松井 彰彦 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30272165)
藤原 正寛 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 名誉教授 (40114988)
鈴木 伸枝 駒澤大学, 経済学部, 教授 (90365536)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2020年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2019年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2018年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2017年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | ゲーム理論 / 実験 / 社会ゲーム / 協力 / 寛容 / 国際比較 / ミクロ経済学 / 多様性 |
研究実績の概要 |
理論論文は研究が進んだため2つの論文に分けて、ナッシュ均衡の存在だけを扱った論文と、進化的安定性を扱った論文にする方向で進めた。進化的安定性の論文では寛容均衡だけでなく、対照的2戦略均衡という協力的なプレイヤーと利己的なプレイヤーしかいないものも分析でき、しかもこれがもっとも安定であるという結論が出た。このとき使用する安定性概念として、スタンダードな概念である中立的安定性を多数戦略均衡に適用することにも成功した。この部分はグレーヴァが国際学会で報告した。また寛容均衡のロジックは段階ゲームが囚人のジレンマでなくても成立することが明らかになり、一般の社会ゲームの分析の糸口となることがわかった。
国内実験の分析においては理論論文が主張している、多様な戦略の共存、マルコフ的ではない行動パターン、裏切られたらやめるという行動(パートナーシップを続けて利己的に行動するのではない)などがデータから見られることがわかった。これらはどれも通常の繰り返し囚人のジレンマ実験で支配的に観察されるものとされていたので、自発的に継続するという環境が本質的に異なる行動を誘発していることがわかった。また、理論では結論が出ていなかった、自発的継続モデルで協力率は高まるのか、という最大の問題については、高まるという結論に至った。しかし、その要因については理論的課題となっている。戦略分布の分析においては、理論値そのものとは異なるが、寛容均衡の6つの均衡戦略に「内的バランス」があるという点では理論を支持する結果を得た。3期間の行動履歴パネルによる戦略分布の計算も、最尤法とそろえて最初の3期間のデータを除いたものでやり直し、全データのときとほぼ同じ結果を得た。国際実験においては、2019年9月にバンコクのモンクット王工科大ラートクラバン校とイスラマバードのパキスタン開発経済大学院でそれぞれ実験を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際実験のデータ収集は、国内実験と比較可能な数となり、さらにタイでの実験も加わった。理論論文では安定性の概念が大幅に改善された。しかし強い安定性を考えたために、多数の戦略が共存する寛容均衡の分析はより難しくなったとは言える。そのせいもあり、まだトップジャーナルに投稿できる形に到達していない。実験論文は、やっと多くの疑問に対する答えが出て来たので、あとはうまく執筆するという段階に来た。
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今後の研究の推進方策 |
自発的継続囚人のジレンマモデルの理論論文の完成を急ぎ、国際学術誌に投稿する。また、一般の社会ゲームにも応用できる「寛容」のロジックについて新たな論文を考える。グレーヴァ、藤原、鈴木は寛容のロジックを中心としてこれまでの10年以上の共同研究の集大成として和書の執筆も始めている。実験論文はグレーヴァと西村で執筆を進めて行く。国際実験のデータ整理は中泉を中心にRAと鈴木で進めて行く。整理が終われば統計的分析は国内実験と同じものをやればよいだけになっている。
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