研究課題
基盤研究(B)
先天代謝異常症ニーマン・ピック病C型(NPC)に対する2-hydroxypropyl-β-cyclodextrin(HPBCD)脳室内投与療法の確立や新規創薬候補の探索を行い、以下の知見を得た。1)モデルマウスにおいて、約20-30 μmol/kgのHPBCD脳室内投与で、末梢循環血中に高濃度で移行することなく、中枢神経障害を改善する、2)この投与量で2週間に1回反復投与することでモデルマウスの生命予後ならびに諸症状を著明に改善する、3)HPBCDよりも物性面で優れ、安全性もしくは有効性に優れる化合物を数種類見出した。以上の成果は、NPC治療法開発に際し重要な基礎知見となると考えられる。
当初、NPC患者に施行されたHPBCD静脈内投与療法は、重篤な肺障害を引き起こし問題視されていた。本研究で見出したHPBCDの脳室内至適投与量は、これら肺障害などの有害作用回避につながり、かつ延命などの治療効果をもたらす可能性を示唆している。治療法のない遺伝難病NPCに対するHPBCD脳室内投与療法の科学的根拠を示す点で、学術的・社会的意義の高い研究成果であると考えられる。また、HPBCDよりも優れた物性や有効性・安全性を示す複数の治療薬候補化合物を見出し、学術誌で公表し、さらに、特許取得および出願を行った。HPBCDを凌駕する新規治療薬候補を見出した点からも社会的意義が高いと考えられる。
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