研究課題
基盤研究(B)
胎児期あるいは新生児期に細胞死の亢進がどのような病態を、表皮あるいは腸管に誘導するかをマウスモデルを用いて検討した。新生児期に表皮の細胞死が亢進すると炎症性サイトカインの一つであるIL-6の発現が亢進し、その結果として上皮バリアの分化マーカーの発現を抑制し、さらなるバリア障害を誘導していることが明らかとなった。胎児期の腸管上皮細胞にネクロプトーシスが誘導されると、本来自然免疫系を制御する獲得免疫系の細胞の発達が未熟なために、3型自然リンパ球(ILC3s)が異常に活性化されて、IL-22を産生して腸管上皮細胞にアポトーシスを誘導し、胎生致死となることが判明した。
細胞死の亢進したマウスモデルを解析し、乳児期のバリア障害には獲得免疫系のT細胞が中心的な役割を果たしているのではなく、自然免疫の活性化により産生される炎症性サイトカインが表皮分化マーカーの発現を強く抑制し、さらなる表皮バリア障害をもたらしていることが示された。一方で胎児期における回腸炎モデルでは、この時期に十分に獲得免疫系の細胞が成熟していないために、自然免疫系細胞の暴走を抑制することができずに、重篤な腸炎が発症することが明らかとなった。今後はこの知見をヒトに応用することで、新生児期に見られる壊死性腸炎や胎児期に見られる皮膚炎などの病態の解明や、新たな治療法の開発に繋がると考えられた。
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