申請者は本研究課題申請時点において、2種類の低分子化合物を用いた、リコンビナントタンパクを用いた従来の分化誘導法よりも短期間で効率の良い誘導が可能な、ヒトiPS細胞の軟骨細胞への分化誘導法(以下、本誘導法を2 Compounds法 = 2C法と呼称する)を確立した (現在、特許申請済み、投稿論文リバイス中)。 申請者はまず、この2C法の各分化段階 (分化誘導開始後0,2,3,4,5,7,9日目) におけるマイクロアレイ解析により、mRNAの網羅的発現解析を行った。本解析を通して、gene ontology解析や階層的クラスタリング解析による各分化段階のcharacterize、および軟骨分化誘導過程で上昇してくる遺伝子群の同定を行った。 続いて、transposaseがopen chromatin領域にアクセスしやすいという性質を利用したエピゲノム解析の手法であるAssay for Transposase-Accessible Chromatin using sequencing (ATAC-seq) も、2C法の各分化段階 (分化誘導開始後0,2,3,4,5,7,9日目) において行った。本解析を通して、2C法における各分化段階の主要マーカー遺伝子のopen chromatin領域の継時的な推移を解析するとともに、各分化段階におけるgene ontology解析やモチーフ解析等も併せて行った。 これらの結果から本手法を用いた軟骨分化誘導法は、多能性幹細胞から中内胚葉を経由して中胚葉、延いては軟骨細胞へと、実際の胎生期の軟骨の発生プロセスを模した段階的な分化誘導を実現していることが明らかとなった。
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