研究実績の概要 |
本研究の目的は,統合失調症スペクトラムの病状悪化を予防するため,妄想知覚を自己制御する400バイオフィードバック技術の開発に向けた基礎研究の実施であった。 平成30年度は,健常対照群38名に対し,平成29年度に作成したN400喚起課題を使用し,以下の要領で実験を行った。 <N400喚起課題>実験概要を教示した後,N400喚起課題を実施した。<脳波測定>課題実施中の被験者脳波を測定した。基準電極を両側乳様突起結合とし,時定数5秒でFz,Cz,Pz,Fp1,Fp2,F3,F4,F7,F8,T3,T4,T5,T6,C3,C4,P3,P4,01,02 の記録電極及び眼球運動を収録した。<脳波解析>被験者ごとに各条件の刺激呈示前200msの平均電位を基線として800msまで加算平均した。瞬目の影響を除くため,電位が基線を±75μv超えたエポックは除外した。各条件で使用可能なデータが40試行未満の被験者は解析から除外した。N400は,刺激呈示から335-485msの最大陰性電位の振幅の頂点を測定した。<心理学的測定>日本語版SPQ及び妄想観念チェックリストを実施した。また,WAIS-IIIを実施した。 その結果,N400喚起課題は,良好な条件の下で健常群のN400を測定できることが示された。一方,臨床応用に向けて以下の課題が示された。第一に,適切な測定時間と認知的負荷のある課題の開発が必要である。本研究の課題は,患者が罹患時でも実施できるよう認知的負荷を減じたが,単調な作業のため眠気を訴える被験者が見られた。第二に,実験目的に合った健常対照群の募集法が必要である。本研究の被験者は所属機関の掲示板及びウェブで募集したが,参加者の多くは参加後の評判を聞いた知人であった。第三に,容易な脳波測定装置が必要である。測定装置の装着時間を短縮しなければ患者は負担に耐えられない可能性があると考えられた。
|