研究課題
研究活動スタート支援
平成29年度は、行動課題のセットアップに費やした。また、これまで蓄えてきたAp-Av課題遂行中のマルチサイト記録のデータの、解析、出版を行った。現在までのところ、共著論文を3報発表し、また、筆頭著者の論文の改訂を行っている。特に、「霊長類の悲観的な価値判断の固執を引き起こす神経メカニズムの解明」に焦点を当てて解析を行い、 線条体局所回路の操作で、繰り返し回避が有意に発生することを突き止めた。この現象は、もう一つの不安回路である帯状回皮質の刺激では見られないもので、大脳基底核の辺縁系回路に特徴的な機能であることが示唆される。このことから、線条体の中の不安回路の異常活動は、強迫性障害にみられる固執を、不安と同時に誘導する可能性がある。不安障害や強迫性障害の脳内メカニズムはこれまで、ヒトの臨床研究、機能MRIやPETを用いたヒトの脳画像研究などを中心に行われている。これにより、強迫性障害はセロトニンやドーパミンなどの神経修飾物質との関りが示唆されてきた。一方で、強迫性障害は腹側線条体、側坐核、内包といった大脳基底核の局所領野をターゲットとしたDBSによっても改善することから、大脳基底核には強迫性障害に特徴的にかかわる局所回路がある可能性がある。本研究では、ヒトと相同な脳構造を持つマカクザルに対して、葛藤課題訓練し、数理モデルを導入し、価値判断の固執という現象を同定した。こうした価値判断の固執は、強迫性障害にとどまらず、意思決定に一般にみられる現象で、特に行動の柔軟性にかかわる、意思決定の重要な要素である。来年度は、これらの実験データをもとに、側坐核に焦点を当てて研究を行う。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 7件、 招待講演 8件)
Science Translational Medicine
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