Fbln5欠損マウスでは通常食にて体重非依存性にインスリン感受性が亢進しており、高脂肪食誘導性の肥満、高インスリン血症、インスリン抵抗性、脂肪肝ならびに脂肪細胞の肥大化が抑制され、Fbln5が全身の代謝制御に関与している可能性が示唆された。さらに、Fbln5欠損マウスは弛緩性皮膚を呈し、寒冷刺激への易感受性、脂肪組織における熱産生・脂肪酸燃焼関連遺伝子の発現上昇を呈し、通常食および高脂肪食負荷マウスの両者において、皮脂腺は萎縮していた。野生型マウスでは高脂肪食負荷により皮膚Fbln5の発現上昇を認めたことと合わせて、皮膚を介した全身性の熱代謝調節機構の変化がFbln5欠損マウスの体重減少・肥満抑制に寄与している可能性も考えられた。 一方で、高脂肪食負荷マウス皮膚における脂肪酸組成はFbln5欠損による明らかな変化を認めなかった。Fbln5欠損マウスでは皮膚におけるSCD-1や中性脂肪合成に関与する各種遺伝子の発現変化を認めたことから、今後Fbln5欠損マウスの皮膚の脂質含量の評価も行っていく予定である。KRT14-CreマウスおよびFbln5-floxedマウスより皮膚特異的なFbln5欠損マウスを作成したが、皮膚全体におけるFbln5の欠損は認めず、代謝関連の一連の表現型に明らかな変化は来たさなかった。皮膚におけるFbln5の発現制御機構については今後さらなる解析を追加する。また、Fbln5欠損マウスにおけるインスリン感受性改善の機構として、血管弾性線維の脆弱性の観点から、血管におけるFbln5の透過性の評価を検討している。現在肝特異的Fbln5欠損マウスも樹立しており、今後表現型への寄与を解析する。
|