研究実績の概要 |
本研究では、単分子接合に対して面直(Z)方向だけでなく面内(X)方向にも応力を加えながら金属-分子界面の構造変化を誘起し、その際の単分子接合の電気伝導度の計測を行った。単分子接合は走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて作製した。実験では、STM 探針を面内方向にも移動することで単分子接合に多方向から応力を与えるシステムを用いて、電気伝導度計測を行った。電極としてAuを用いた。昨年度はAuとAu-N結合を形成する4,4’‐ビピリジン(BPY)、1,4-ベンゼンジアミン(BDA)を用いて計測を行った。今年度も引き続き、他の分子を用いて同様の計測を行った。具体的には、AuとAu-N結合を形成する1,4-ブタンジアミン(C4DA)、AuとAu-S結合を形成する1,4-ベンゼンジチオール(BDT)、1,4-ブタンジチオール(C4DT)、AuとAu-π結合を形成するフラーレン(C60)も用いた。STM探針をX及びZ方向に500Hzの速度で周期的に振動させると、単分子接合の電気伝導度が変化した。電気伝導度の時間依存性について高速フーリエ変換(FFT)を行い、伝導度の平均値で規格化し、周波数との関係をヒストグラムとして表現すると、500Hzにピークが現れた。500Hzでのピークの高さは、応力印加時での伝導度の最大値と最小値の差を伝導度の平均値で規格化した値に比例している。Z、 X方向それぞれについて500Hzでのピークの高さと探針の振幅の関係から、各単分子接合の電気伝導度の探針振動に対する応答性を評価した。X方向での応答性は、 BPY, BDA, C4DA>BDT, C4DT, C60の順に大きかった。Z方向での応答性はBPY>BDA, C4DA, C4DT>BDT, C60の順に大きかった。このように、電気伝導度の応答性が振動方向、Auとの結合様式によって異なることが分かった。
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