研究実績の概要 |
哺乳類培養細胞を用いた先行研究により私は、rRNAを対象とし、塩基メチル化修飾の一つであるN1-メチルアデノシン(m1A)修飾が細胞の増殖調節に関与することを明らかにした。そこで本研究では、rRNAにおけるm1A修飾と老化制御の関係を個体レベルで解明するため、老化研究のモデル生物として確立されている線虫を用いて検証を行った。 1, 線虫26S rRNAにおけるm1A修飾の存在と責任因子の同定 私はまず、質量分析計を用いて、rRNAに含まれるm1A修飾の定量解析を行った。その結果、線虫の26S rRNAにm1A修飾が存在することを見出した。さらに、その責任因子として哺乳類rRNAのm1A修飾因子であるNMLの線虫ホモログT07A9.8を同定した。 2, 線虫26S rRNAにおけるm1A修飾部位の決定 m1A抗体を用いたRNA免疫沈降実験を行った。その結果、26S rRNAの674番目のアデノシン(A)周辺にm1A修飾が存在することを見出した。さらに、26S rRNAの674番目のAがT07A9.8によるm1A修飾部位であることを明らかにした。私は、T07A9.8をrRNA adenine methyltransferase-1(RRAM-1)と再命名した。 3, 線虫26S rRNAのm1A修飾が寿命に及ぼす影響の解析 RRAM-1と寿命の関わりを検証するため、RNAi法によりRRAM-1遺伝子をノック ダウン(KD)した線虫の寿命を測定した。その結果、RRAM-1 KD線虫の寿命はコントロールと比較して、有意に延長することを見出した。 以上の検討から、私は、rRNAのm1A修飾が個体の寿命制御に関わる可能性を提示した。さらに、本研究結果は、The Journal of Biochemistry誌に掲載され、RNAメチル化による老化制御メカニズム解明の糸口となることが期待できる。
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