本研究の目的は、脊髄損傷後のリハビリテーションが皮質脊髄路の再編を促すメカニズムを明らかにすることである。先行研究によって、リハビリテーションが皮質脊髄路の再編を促し、運動機能の回復に寄与することが明らかとなってきた。しかしながら、リハビリテーションによる運動機能の回復メカニズムについては未だ不明な点が多い。そこで本研究では、脊髄損傷後に皮質脊髄路の軸索側枝に生じる「刈り込み」と呼ばれる再編現象に着目し、リハビリテーションが側枝の刈り込みを促すのかを検証した。その結果、①脊髄損傷後のリハビリテーションが皮質脊髄路からの側枝の刈り込みを促し運動機能の回復を促進すること、②自然に起こる側枝の刈り込みにはNeuropilin-1(Nrp1)が必要であること、③側枝の標的であるPropriospinal neuronにおいて、Nrp1のリガンドであるSemaphorin3A(Sema3A)が発現すること、④Nrp1を介した側枝の刈り込みは運動機能の回復に必要であること、⑤リハビリテーションはNrp1とSema3Aの発現を亢進させないことを明らかにした。以上の結果は、脊髄損傷後に自然に起こる側枝の刈り込みはSema3A-Nrp1シグナルを介して生じ、運動機能回復に寄与することを示唆している。また、これらの結果は脊髄損傷後に自然に起こる側枝の刈り込みとリハビリテーションによって促される側枝の刈り込みは、異なるメカニズムによって生じていることを示唆している。今後は、リハビリテーションが側枝の刈り込みを促す分子メカニズムを検証していく。
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