本年度は研究課題に対する新しい切り口として、天の川銀河中心のブラックホールを周回する星の電磁波観測を通した重力場の測定に取り組んだ。この研究は受け入れ研究者の齋田氏と観測の専門家である西山氏が主に取り組んでいるものであり、彼らのグループに参加することで積極的に意見を交えることができた。ちょうど平成30年はS0-2と呼ばれる星がブラックホールに最接近した年であり、この時に星が感じる重力の強さは、これまで行われてきた電磁波観測で最も強い。また、過去の観測データからはブラックホールと星の二体問題として計算して矛盾がないため、シンプルな系として扱うことができる。そこで私はS0-2の運動をシミュレーションし、すばる望遠鏡による赤方偏移データとの比較を行うことで、ブラックホールの質量などを求める解析コードを作成した。また、実際にハワイのすばる望遠鏡へ赴き、観測を行った。本研究グループの成果として、赤方偏移に現れる相対論効果(ニュートン重力と一般相対論の差)を示した。その成果を「Complete General Relativistic Time Evolution of Redshift of Photons Coming from a Star Orbiting Sgr A*」という題でPublications of the Astronomical Society of Japanに投稿している。また、日本天文学会、JGRG、日本物理学会で研究成果を口頭で発表した。本年度ではブラックホール擬似天体を取りれる研究まで進めることができなかったが、作成した解析コードを改良することで、銀河中心にブラックホール擬似天体が存在すると仮定した場合の解析に取り組む事ができる。採用期間終了後も引き続き本研究に取り組み、成果を出すつもりである。 また、昨年度に取り組んだグラバスターのシャドウに関する研究に本年度に行った追計算を含め、まとめた論文をPhysical Review Dに投稿している。
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