研究課題
特別研究員奨励費
本課題では、耳石の酸素安定同位体比の高解像度分析をマイワシに初めて導入することで、従来得られなかった個体の経験水温という観点から、マイワシの生態および資源量変動機構の解明することを目的とした。まず、日本近海およびカリフォルニア沖に生息するマイワシについて、それぞれの海域から収集した合計250個以上の耳石のd18O分析を実施し、成長段階ごとに水温と成長速度とを比較した。カリフォルニア沖では比較的高水温年代、日本近海は比較的低水温年代にマイワシが増加すると言われてきたが、仔稚魚期の水温と成長速度の関係は両海域で類似していたため、水温は資源変動を直接的に駆動している要因ではなかった可能性が考えられた。また、南アフリカ西、南、東海岸にて採集されたマイワシの耳石についても類似した分析を行ったところ、成長速度および経験水温は、地理的に顕著に異なっており、西側で低水温、低成長速度を、南・東側で高水温・高成長を経験していたことが明らかになった。なお、南アフリカの西岸はカリフォルニア沖と同じく強い湧昇域であり、東~南岸には黒潮と同じく西岸境界流であるアガラス海流が流れている。したがって本課題では、水温という一要因のみではマイワシ属資源変動を説明することは難しいことが明らかになった。また、海域間の比較から、湧昇域と西岸境界流域ではマイワシの基本的な生息環境が異なっていることが示された。基本的な環境が異なれば、最適な生活史戦略や背負うリスク要因も異なると考えられ、これがカリフォルニア沖と日本近海では、水温変化に対するマイワシ資源の応答が一致しない原因となっている可能性がある。この仮説は今後国際的な比較研究を展開する上での根本的な指針となる可能性を秘めており、耳石の酸素安定同位体比の高解像度分析を導入することで生まれた重要な成果であるといえる。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件)
Methods in Ecology and Evolution
巻: 10 号: 1 ページ: 59-69
10.1111/2041-210x.13098
Fisheries Research
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