研究課題
特別研究員奨励費
本研究は,イギリス(イングランド・ウェールズ)刑法における量刑論について,現地でのリサーチ等を通じて歴史的背景や理論的根拠を対象とした研究を行うことにより,近時の実務で大きな問題となっている,触法精神障害者に対する量刑の判断枠組みを明らかにすることを目的とする。今年度も,昨年度に引き続き,触法精神障害者の量刑判断枠組みを提示する準備作業として,自招性精神障害の刑法的評価の問題に立ち入った検討を試みた。昨年度は,自招精神障害をめぐる議論のうち,従来責任能力論の枠内で論じられていた問題(いわゆる「原因において自由な行為」論をめぐる議論)を分析した(その結果,精神障害に自招性が認められる場合にわが国の裁判実務では,犯行に及ぶ意思を事前に有していたかを問わず,刑法39条の適用が排除されていること,換言すれば,自招性精神障害の場合にも刑法39条の対象たりうることを前提に「原因において自由な行為」の理論を構成する日独の学説とは異なり,わが国の裁判実務は,自招酩酊の場合に責任無能力とされる余地を端的に排除する英米の判例学説の立場に近いことを明らかにした)。これに対して,今年度は,こうした精神障害が量刑に与える影響や,制御能力のみに影響を与える精神障害(クレプトマニアなど)と量刑の関係をめぐる議論を分析した。これらの成果は,①第15回司法精神医学会大会におけるシンポジウム「『異質』と『同質』」(パネリスト),および,②札幌法と心理研究会にて研究報告(「責任能力をめぐる諸問題」)において一部公表した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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北大法学論集
巻: 69巻6号 ページ: 1868-1821
120006600966
巻: 70巻1号
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法と精神医療
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比較法学
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