近年、宇宙探査機による観測が進み、恒星の振動を精密に解析できるようになってきた。特に、多くの太陽型星において「太陽型振動」として分類される小さい振幅のモードが1つの星に多数見つかっており、星震学上重要視されている。 この観測結果を用いることで、恒星の内部構造や年齢などを決定する星震学の精度を高められることが期待されている。しかし、そのためには理論モデルの精度も向上させなくてはならない。恒星の理論モデルにおいては、未だに多くの不確定要素があるが、本研究ではそのうちの対流のモデリングについての問題に取り組んできた。 前年度までは、太陽型星モデルにおいて、1次元モデルの対流の混合距離パラメータ(混合距離が圧力スケールハイトの何倍かを表すファクター)の値を、CO5BOLDコードでの3次元シミュレーションで得られたモデルと整合することで制限してきた。 一方、太陽型振動の周波数は、表面付近の乱流圧に大きく影響を受けると考えられていて、精密かつ系統的な星震学を行うには、乱流圧を含んだ恒星進化モデルが必要とされている。前年度までのパラメータの制限においては、従来の進化モデル同様、1次元モデルには乱流圧を含めなかったが、今年度は1次元モデルに乱流圧を含めてパラメータの制限を行った。1次元モデルに含める乱流圧の大きさはCO5BOLDモデルに基づいて決め、対流領域より上層のオーバーシューティング領域においても乱流圧を考慮した。 その結果、乱流圧を含めない場合と比べるとパラメータの値は大きくなる傾向が見られた。これは、オーバーシューティングを考慮したことで、従来の純粋な局所対流モデルを用いたときに対流層上端部で見られる急激な物理量変化が解消されたためである。整合した1次元モデルにおいて固有周波数を計算し、太陽の観測と比較したところ、断熱近似においては乱流圧を含まない場合に比べて観測の周波数に近くなった。
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