研究課題
特別研究員奨励費
トマトは世界の主要農作物であり、その栄養価やストレス耐性に関わる知見は学術的・商業的観点から大変意義深い。本研究では、植物の一次・二次代謝や非生物的ストレス耐性に関わる酵素であるアルド-ケト還元酵素に着目した。トマトの葉において、種々のストレスや植物ホルモンによって著しく遺伝子発現が増加するトマトアルド-ケト還元酵素(以後、SlAKR1とする)について、その生理機能およびストレス応答的な遺伝子発現制御機構を明らかにすることを目的とした。本年度は、まずSlAKR1の生理機能を検討した。SlAKR1過剰発現タバコを用いて種々の非生物的ストレスに対する耐性を評価したが、SlAKR1は非生物的ストレス耐性に関与しないことを示唆する結果が得られた。ついで、生物的ストレス応答への関与を検討した。アグロバクテリウムや細菌成分であるリポ多糖を含む溶液をトマト葉に浸潤させると、SlAKR1の遺伝子発現は著しく増加した。興味深いことに、これらを含まない溶液を浸潤させても、SlAKR1の遺伝子発現は強く誘導された。浸潤処理葉は電解質溶出率が上昇していたことから、浸潤処理は細胞の損傷を伴い、SlAKR1の遺伝子発現は細胞の損傷によって誘導される可能性が示唆された。SlAKR1は、病傷害ストレスに伴う細胞の損傷によって遺伝子発現し、生物的ストレス抵抗性に関与している可能性がある。また、SlAKR1の遺伝子発現制御機構の解明のため、プロモーター解析を行った。その結果、SlAKR1プロモーター領域-600から-500 bpの間に存在する2つのG-box様配列がストレス応答的な遺伝子高発現に重要なシス因子であることが明らかになった。SlAKR1プロモーターはシロイヌナズナの細胞においても同様に高いプロモーター活性を示し、植物種間共通のストレス誘導的高発現プロモーターとしての応用利用可能性が示唆された。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 82 号: 3 ページ: 425-432
10.1080/09168451.2018.1429887