今年度は、去年度発表した論文を広く知ってもらうため、国内外問わず、様々な地に赴き研究発表を行った。さらに、自身の研究の幅を広げるべく、海外に半年間滞在した。 以下には今年度発表した論文2つに関する概要を述べる。 1つは、慶應義塾大学の木村太郎氏と共に、位相的弦理論のブレーンを挿入した時の分配関数を用いることにより、非トーリックの一つの例である周期的幾何に対するミラー曲線を導出した。この表示から、現在提唱されている位相的弦理論の非摂動的定式に対する仮説が非トーリックの場合にも検証できると思われる。また、分配関数の表示から、5次元と6次元のゲージ理論の間に非自明な対応が存在することを指摘した。これは位相的弦理論に限らず、弦理論のまだ明らかになっていない性質の存在を示唆している。この論文は現在雑誌に投稿中であり、査読者からは好意的な返事を貰っている。よって出版されるのは時間の問題である。 2つ目は、去年に提唱された、(超)弦理論の非摂動的定式を与えると予想される弦幾何理論と呼ばれる理論を位相的弦理論に適用すべく、弦幾何理論の提唱者である弘前大学の佐藤松夫氏と共に、位相的弦幾何理論を定義した。この理論から、ターゲット時空が特殊な場合においては、位相的弦理論の摂動論的振幅が導出できることを示した。さらに、位相的理論であることの恩恵として、位相的弦幾何理論の作用がQ-exactで書けることを示した。これにより、局所化の手法を用いて位相的弦理論の非摂動効果を含めた振幅が位相的弦幾何理論から導出できると期待される。この論文は2019年3月中旬に提出したため、雑誌に投稿し、査読を経て出版の是非が決定するのは当分先のことになる。
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