研究課題
特別研究員奨励費
前年度までに申請者らは、生合成酵素を活用するアプローチで抗腫瘍性アルカロイド群の迅速合成法を確立していた。3つの天然物を合成し、本成果は天然物群の化学-酵素ハイブリッド全合成法として、国際学術誌に掲載された。本年度は、本手法を用いて合成した非天然型類縁体が核酸アルキル化能を有することを見出した。この結果についても国際学術誌に掲載された。生合成酵素SfmCを用いた酵素反応により、テドラヒドロイソキノリン(THIQ)アルカロイド群に共通する五環性母骨格を構築した。この際、天然型基質のアミド結合を容易に切断可能な官能基 (エステル基・アリルカルバメート基) へと置き換えた非天然型基質を用いた。導入したエステル又はアリルカルバメート基を切断し、種々の官能基変換を施して天然物サフラマイシンA、ジョルナマイシンA、サフラマイシンY3の全合成を達成した。THIQアルカロイドは、DNA二重鎖をアルキル化する。五環性骨格の酸化度がDNAアルキル化能に大きく影響することが示唆されるが、詳細は不明である。申請者らが確立した本手法は、五環性骨格の両端がいずれもフェノールである非天然型類縁体の短段階合成が可能である。そこで、合成した新規リガンドのDNAアルキル化能を調査した。15塩基対のDNA二重鎖に対して合成リガンドを作用させたところ、配列選択的にDNA二重鎖をアルキル化した。キノン構造を有する天然物シアノサフラシンBとの比較から、より広範な配列選択性を有することが示唆された。さらに、大きさの異なる置換基を導入したリガンドを3種合成し、DNAアルキル化能への影響を検討した。結果として、立体障害の大きな置換基や長鎖アルキル基が本骨格のDNAアルキル化能を阻害することが強く示唆された。本成果はBioorganic & Medicinal Chemistry Letters誌にて速報として公表した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://www.tuat.ac.jp/outline/disclosure/pressrelease/2018/20180822_01.html