研究実績の概要 |
(1)複素単純Lie環の既約最高ウェイト加群で,零化因子がJosephイデアルとなるようなものを分類した.このような最高ウェイトは「各単純ルートが定める直線か超平面のどちらかに属するウェイト」として構造的な特徴付けを持ち,分類結果は今までに知られていなかった最高ウェイト加群を含む.これまでの研究成果と合わせると,分類の系としてD, E型のsplitな連結実単純Lie群の極小表現の,放物型誘導表現間の絡微分作用素の核空間としての実現がランクの数だけ得られたことになる. (2)複素単純Lie環に対してDynkin図形が構成できることの精密化として,実単純Lie環に対して佐竹図形やVogan図形という図が作れる.佐竹図形は一意的に定まるのに対して,Vogan図形はルートの正値性の取り方に依存することが知られている. 最高実ルートに関するCayley変換を考え,Vogan図形が一意的に定まるような実単純Lie環に帰着することで,佐竹図形からVogan図形への写像を構成した.この写像の像となるVogan図形はなるべく単純ルートがコンパクトルートになるように構成したものであり,実単純Lie環がHermite型の時は極大コンパクトな部分Lie環の中心が,四元数型の時は極大コンパクトな部分Lie環のsu(2)に同型なイデアルが図形から見て取れる,という特徴がある. (3)昨年度までの「連結実単純Lie群の極小表現を誘導表現間の絡作用素の核空間として構成する」研究を,上記の研究(1),(2)を用いることでより構造的に記述した.大雑把に述べると,(1)の最高ウェイト加群を単位元に関するTaylor展開として得られるような放物型誘導表現の内,(2)のVogan図形における極大コンパクトな部分Lie環のイデアルに対応する放物型部分群に関する誘導表現を考えると,その表現は極小表現を含む.
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