研究課題
特別研究員奨励費
本年度は出芽酵母由来の電子キャリアタンパク質isoform-1シトクロムc(iso-1-Cyt c)、及び低酸素時に発現が誘導されるisoform-2シトクロムc(iso-2-Cyt c)と、パートナータンパク質のユビキノール-シトクロムcレダクターゼ(Cyt bc1)及びシトクロムc酸化酵素(CcO)との電子伝達機構について、分光法及びCcOによる酸素消費量の測定を通して速度論的解析を行った。これらの解析によって得られた各Cyt cのCyt bc1, CcOに対する複合体親和性はいずれもiso-2-Cyt cの方が高く、生体内環境に近いイオン強度においてもその傾向は維持された。以上より、iso-2-Cyt cは各パートナータンパク質とiso-1-Cyt c以上に安定な電子伝達複合体を形成していることが示された。さらに、ミトコンドリア電子伝達系の高効率化の要因となるCyt bc1-CcO超複合体の形成に寄与する膜貫通タンパク質Respiratory Supercomplex Factor 1 (Rcf1)に着目し、このタンパク質がCyt bc1-CcO間電子伝達に与える効果について検討した。同様の解析を行った結果、Rcf1存在下において、特にiso-2-Cyt cのCyt bc1との複合体親和性が2-2.5倍、CcOへの電子伝達速度が1.5-2倍の上昇を示した。これらの結果よりRcf1-Cyt c間の相互作用の形成が示唆され、iso-2-Cyt cがCcOへ電子を供給した後Rcf1との相互作用によって速やかにCcOから解離し、Cyt cが拡散過程を経ずにCyt bc1へ迅速に会合する機構の存在が予想された。以上本年度の研究より、iso-2-Cyt c及びRcf1が低酸素時のミトコンドリア呼吸鎖の高効率化を通してATP生産に寄与していることが新たに提唱された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects
巻: 1862 号: 6 ページ: 1339-1349
10.1016/j.bbagen.2018.03.010
120006585774