研究実績の概要 |
PLA多孔質体(PLAモノリス)は機械特性や親水性に乏しく、特に水環境中での用途が制限される。一方、バクテリアセルロース(BC)は生体適合性に優れる微生物由来の繊維であり、BC繊維との複合化によりポリマーの物性強化や親水性の向上が報告されている。当該年度は、前年度にて開発した新規熱誘起相分離法(TIPS)法をもとにPLLAモノリスと異方性を持つBCゲルとのコンポジット化を行い、PLLAモノリスの機械特性および親水性の向上を試みた。 具体的には、1,4-ジオキサン/2-ブタノン/水を溶媒とするTIPS法を用いて、PLLA濃度50~100 mg/mLの範囲にてBC/PLLA複合化モノリスを作製した。BC/PLLAモノリスは、いずれもPLLA単体の葉状骨格中にBC繊維が3次元的に貫通し、蔦状の構造が発現していた。 BC添加による機械特性の変化を確認するため、モノリスの圧縮試験を行った。PLLA濃度の増加によりBC/PLLAモノリスの圧縮強度が飛躍的に上昇した。単体のPLLA100と比較すると、BC/PLLA100は約4倍にも及ぶ圧縮強度を有しており、BC骨格を含むことでPLLA骨格が強化され、物性が大幅に改善されることが明らかとなった。PLLA100の場合では水に対して約129°の接触角を示したが、BC/PLLA100は102°となり、BCを骨格に含むことでモノリス表面の親水性が改善されていた。さらに、モノリスの水吸収性を検証するため、接触角の経時変化を測定した。PLLA100の場合では、時間に対して接触角変化はほとんど観測されなかったが、BC/PLLA100の場合では、時間とともに水がモノリス内部へ浸透し、非常に高い水吸収性を示した。 この結果は、従来のPLAモノリスの弱点を大きく改善するものであり、PLAモノリスの高機能化において大変重要な成果である。
|