研究実績の概要 |
今年度はSmoothed Particle Hydrodynamics 法による衝突計算コードを用いて, 直径100kmのターゲット小惑星ヘの衝突を様々な衝突条件によって再現し, 形成される小惑星形状を包括的に調べた. その結果, 衝突2天体の質量が近くなおかつ破壊的ではない低速衝突では極めて平たい形状を含む様々な形状が形成されることがわかった. またターゲット小惑星が粉々になるような高速で破壊的な衝突では, 丸い形状と頭が2つあるような形状は形成されるが, 平たい形状の形成は難しいことがわかった. 前者の衝突は主に惑星形成期の太陽系で, 後者の衝突は主に現在の太陽系で起きるため, 小惑星の平たい形状は惑星形成期の環境で形成されやすいことが予想される. そこで直径100km以上の実際の小惑星の形状を, 最近の衝突破壊の影響を受けている小惑星族に含まれているものと, 族に含まれていないものに分けて調べた. その結果, 族に含まれている小惑星は基本的に丸い形状をしているが, 族に含まれていない小惑星には極めて平たい形状をした小惑星が存在することがわかった. このことは, 破壊的な衝突では丸い形状ができやすく, 平たい形状の形成は難しいという数値計算の結果と整合的である. また以上の検討より, 直径100km以上で平たい形状をしている小惑星は, 惑星形成期における近い質量同士の低速な小惑星衝突で形成され, 破壊的な衝突の影響を受けることなく現在まで生き残ってきたものであることが示唆された.
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