研究課題
特別研究員奨励費
火星の表面には、暗い縞状の模様が、毎年春先から現れ秋から冬にかけて消失するという現象が観測されている。この縞模様はRSLと呼ばれ、この季節によって変化するRSLの特徴こそ、現在の火星で液体の水が流れている証拠であると長らく考えられてきた。確かに、暖かくなることで溶けた氷が火星の表面を流れ、気温低くなる時期には水が凍ると考えると、RSLの季節性変化をスムーズに説明できる。しかし、低気圧の火星では、液体の水は安定な状態で存在することは難しく、さらに水源となるようなものは見つかっていない。そのため最近では、RSLは水ではなく、砂が流れたものであるという説が提唱されている。しかし砂の場合、季節性変化を説明することは難しい。近年、火星の全域にわたる湿度変化の見積もりがなされたが、その結果によると、RSLができる地域のいくつかでは、縞模様が現れる時期の湿度は減少し、逆にRSLが消える時期に湿度が上昇していることがわかった。そこで我々は、RSLの季節性変化は湿度の減少によって、湿った砂が乾燥し、粒子間の粘着力がなくなることで斜面を滑り落ち、再び湿度が上昇したときには、砂が湿り気を帯びて急斜面状に堆積することで発生しているのではないかと考え、数値計算によって、湿った砂の安息角計算を行った。その結果、火星の重力下では、砂の粒子間に、砂一粒の体積の10^{-7}程度の体積の水が吸着すると砂の安息角は10度ほど上昇することがわかった。この量の水は、RSLが水そのもので引き起こされている場合の水の量と比べ、圧倒的に少ない。そのため、水源のようなものがなくても、空気中からの水分で達成できると思われる。ここから我々は、RSLは主に砂で引き起こされているが、季節性の変化は、湿度が、温度と主に重要な影響を与えているのではないかと考えた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Icarus
巻: 319 ページ: 407-416
10.1016/j.icarus.2018.09.025
Scientific Reports
巻: 8 号: 1 ページ: 8111-8111
10.1038/s41598-018-26200-2