研究課題
特別研究員奨励費
本年度は,前年度の5月,7月,10月,1月に親潮域で得た試料を用いて,パルマ藻の現存量と種組成の解析を進めると共に,現場群集の疑似現場培養実験試料を解析した.密度成層の発達期にあった5月,7月,10月は表層では細胞密度が低く,水深30-50 mの亜表層にパルマ藻の現存量極大があった.一方,1月は水深0-100 mにわたり100000 cells/l以上の高密度で分布しており,冬季鉛直混合に伴いパルマ藻群集の現存量が顕著に増加することが示された.パルマ藻群集は新規1品種を含む2属8種15品種から構成されおり,5月と7月にはTriparma strigataとTriparma laevis f. inornataが現存量極大の17-90%を占めた。一方,10月表層および1月の水深0-100 mにはTriparma columacea f. convexaが全体の40-73%を占める優占種となった.この結果は,パルマ藻の種間で増殖に適した時期および水深に違いがあることを示唆している.船上培養実験の結果,5月は水深30 mにパルマ藻の現存量極大があったにも関わらず,捕食者を除去した培養区では,水深10 m区で増殖速度が最も高かった.これは,春季表層のパルマ藻群集は実際には活発な増殖期にあるものの,それを上回る高い捕食圧により現存量が低く抑えられていることを示唆している.現場試料の走査型電子顕微鏡観察では,パルマ藻の捕食者となり得る小型の渦鞭毛藻や微小鞭毛虫,繊毛虫が分布していることが確認された他,多くの動物プランクトン糞粒中にパルマ藻細胞が観察された.特に小型(<10 μm)の糞粒中では珪藻等の他の植物プランクトンよりもパルマ藻が優占するケースがあった.これは,微小動物プランクトンのパルマ藻に対する選択的な捕食圧が現存量を制御する因子として重要である可能性を示している.
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)
Polar Science
巻: 18 ページ: 130-136
10.1016/j.polar.2018.08.001
Frontiers in Marine Science
巻: 5 ページ: 1-17
10.3389/fmars.2018.00370