研究実績の概要 |
まず、Ca2+透過性電位センサードメインがどのようにCa2+透過路を形成しているかを変異体を用いた実験により調べた。その結果、4つの膜貫通領域のうち2番目の膜貫通領域のN末端側にあるリジンおよび3番目と4番目の膜貫通領域の間にあるグルタミン酸 がイオン透過路の入り口を形成していることが分かった。続いて、膜貫通領域内でイオン透過路の形成に関わるアミノ酸の探索を行った。Ca2+などの正に帯電したイオンが疎水性環境である膜を通過するためには、膜貫通領域において酸性アミノ酸と相互作用しながら進む必要がある。そこで、膜貫通領域およびその近傍に存在する酸性アミノ酸ひとつひとつに変異を導入し、Ca2+透過が阻害されるかどうかを調べた。しかしながら、すべての変異体において野生型と同等のCa2+透過が見られたため、イオン透過路の形成に必須なアミノ酸を同定することはできなかった。 また、光駆動性カルシウムチャネルの候補分子を探索するためのスクリーニング系の構築を行った。この系の確立には、Ca2+チャネルを欠損した変異型出芽酵母株 (H317) を用いた。H317はa-factorと呼ばれるホルモンで刺激されると細胞死を起こすが、Ca2+透過性のイオンチャネルを強制発現させることでその細胞死を防ぐことができる。実際、H317に欠損しているCCH1を強制発現させてa-factor刺激を行い、細胞生存率をメチレンブルー染色により調べた結果、生存率は90.0±0.93%であった。一方、CCH1を発現させなかった場合の生存率は56.1±1.03%であり、CCH1を戻した場合と比べて有意に生存率が低かった (mean±SEM, n = 3, p < 0.01 by Tukey’s test)。これにより、酵母を用いてCa2+透過性を持つイオンチャネルのスクリーニングする系が確立した。
|