研究実績の概要 |
平成29年度の研究計画の一つである「独自に開発した触媒による1,2ジオールのエナンチオ選択的アシル化反応」について詳細に実験を行った。その結果、触媒を用いたd,l-1,2-ジオールの速度論的光学分割反応において低触媒量(0.5 mol %以下)かつ、高いエナンチオ選択性の発現を可能にした(最大s = 180)。この触媒反応系では従来法では難しい非環状および環状1,2-ジオールを同一触媒を用いて分割することができることが大きな特徴である。また、過剰反応であるジアシル化反応の抑制にも成功している。各種対照実験より、触媒の第三級アルコール部位と反応基質の1,2-ジオール部位との間の水素結合がモノアシル化反応のみを劇的に加速し、高い触媒活性とエナンチオ選択性を発現していることが明らかになった。また、大量スケール合成(10 g)にも応用可能であり、このとき触媒を回収率96%以上で回収することもできた。さらに、本触媒反応系はmeso-1,2-ジオールの非対称アシル化反応にも使用することができ、この場合においても高い触媒活性とエナンチオ選択性を示した。本研究はAdvanced Synthesis & Catalysis, Vol. 359, pp. 2778-2788 (2017)., The Journal of Organic Chemistry, Vol. 82, No. 13, pp. 6846-6856 (2017)., 有機合成化学協会誌, Vol. 75, No. 6, pp. 632-649 (2017).に詳細に記し、論文として発表した。
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