第3年度は主に以下の2点を目標とした. (1)視線軌跡可視化手法を評価するためのユーザテストの実施,および研究のまとめ (2)(1)で実装した手法の,歩行者動線分析への応用 これらの達成を目指し,以下のように研究を進めた.まず年度の前半では視線軌跡可視化手法での新たな実行結果を生成し考察した.事例として[A]Wikipediaの中の1ページ[B]飲酒の影響を警告するポスターの画像 の2点を選び,それぞれの画像を8名の被験者が90秒間ずつ自由に観察した際の視線の動きを分析した.実行結果として「他の被験者と大きく異なる行動をとっていた被験者3名の視線軌跡の特徴(特定の行動の頻繁な繰り返し等)」「代表的な行動のパターン(色や大きさが目立つイラストに注目する,類似した形状の複数のイラストを続けて辿る等)」を可視化できた.これらの実行結果は7月の第47回可視化情報シンポジウムで発表したほか,11月にはジャーナルとしてNICOGRAPH2019で発表し最優秀論文賞を受賞した.続いて,実装した視線軌跡可視化ツールの細部の調整と数名の可視化の専門家(共同研究先であるシュトゥットガルト大学に所属)からフィードバックを得ることを数回繰り返した.具体的には,ツールの操作性や可視化内容の可読性の向上を目的として画面のレイアウトの改良や配色の見直しなどを行なった.これらのフィードバックの結果については,英語論文としての発表の準備を進めている. (2)に関しては(1)の視線軌跡可視化の研究と合わせ,動線の要約と可視化についての研究としてまとめる作業を進めた.視線軌跡と歩行者動線の性質の違いに沿った適切な要約方法やパターン分析手順についての考察などを進め,3月に博士論文として提出した.
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