本研究では、1)ビトロネクチン誘導性軸索決定におけるPI3K、GSK-3beta関与の解明、2)軸索決定を制御するビトロネクチン受容体探索を行ってきた。ビトロネクチン過剰/欠損下では、1本の軸索決定機構が崩壊することをすでに発見している。1)では、ビトロネクチン添加/ノックアウト下のマウス小脳顆粒細胞初代培養系にPI3K阻害剤であるwortmanninを加え、ビトロネクチン誘導性軸索決定シグナル経路を調べた。軸索解析は、軸索マーカー陽性突起を軸索とし、GFP発現により突起形態を明瞭にした上で行った。その結果、PI-3キナーゼ阻害剤によりビトロネクチンによる複数軸索を持つ細胞数増大機能が阻害された。2)では、avb5インテグリンが受容体であると検証するため、b5インテグリンを過剰発現/ノックダウンしたCGCの軸索本数を計測し、a5インテグリンの軸索決定への関与を検討した。まず、ビトロネクチン添加による複数軸索を持つ細胞割合増大効果が受容体候補のb5インテグリンのノックダウンにより打ち消され、ビトロネクチンの受容体としてavb5インテグリンが機能していることが示された。さらに、GSK3阻害剤である塩化リチウムを加え、軸索数を解析したところ、b5インテグリンのノックダウンによって打ち消されたビトロネクチンによる複数軸索形成機構促進機能低下が、GSK3beta阻害剤により打ち消された。このことから、小脳顆粒細胞において、ビトロネクチン/avb5インテグリン/PI-3キナーゼ/GSK3betaシグナル経路により軸索決定が担われていることが示された。
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